プラチナの誘惑
「…電話終わった?」

見上げると、私の鞄を持った昴が立っていた。
私の様子を伺いながら、少し心配そうに私を気づかう顔は、やっぱり格好良くて、仕立ての良さそうなスーツに負けていない。

今日は昴に振り回されてばかりで、ちゃんと見ていなかったけれど…。

「いいな…昴」

「…は?」

「格好いいし…仕事できるし…女の子に大人気だし」

「…まぁ、間違ってないけどな」

そう言って苦笑しながら私の隣に座ると、まるでそれが自然な事みたいに私の肩を抱き寄せた。

「…こんな事も慣れてるし…。無敵だね。

羨ましいよ」

はぁ。

小さくため息が出た。
どうしてこんな風に私に寄り添うのか…そして
どうして…キスを落としたり…したのか…。

聞きたい事ばかりで混乱し続ける気持ちをうまく言葉にできない。
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