プラチナの誘惑
情けない声を出してしまう私をじっと見ていた昴は、私の肩を抱いたまま
ベンチに軽くもたれると

「…この店、気に入った?」

明るく聞いてきた。
何だか流れとは違う問いに、戸惑ってしまう。

「ニューヨークの美術館で彩香を見かけてからずっと、この店気に入るだろうなぁって思ってたんだ」

「…」

悪戯が成功したように笑いながら言う昴の横顔は、普段見る顔とは違って可愛くて子供みたいで。
間近にある口元が笑いで震えているのが新鮮…。

「気に入ったよ。
まるでそのまま美術館みたいな内装だもんね。

私の好みがわかってたって…嬉しい。

また今度ゆっくりくるね。
教えてくれてありがとうね」

ほんの少し照れながら。

私の好みを考えてくれた昴の気持ちが嬉しくて、
素直に言えた。

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