プラチナの誘惑
昴の軽い言葉は無視してカレーを食べてみる。
入社して初めて食堂のカレーを食べるのは、少しドキドキした。
大抵は定食か麺類。

今日はたまたま食べたいもの全部が売り切れていて、仕方なく選んだメニュー。

興味半分不安半分で食べてみると意外においしい。
じっくり煮込んで、一晩寝かせる私の手作りカレーよりもおいしい…。
単なる会社の食堂のカレーなのに。

一口ごとにおいしさに驚く私の気持ちがわかったのか、目の前でコーヒーを飲む昴は軽く笑っている。

「もっと早く食べてたらよかったって思っただろ?」

「…ん。こんなにおいしいなんて思わなかった。
今まで損してたかも…」

「だろ。知ってみると、意外に自分好みってのに
ぶちあたる事ってあるよな」

「…だね」

…じっと意味ありげに私を見つめる昴の目が気になって、それとなく見つめ返すと。

「…いや、別に」

くすっと笑われた…。

変なの。
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