プラチナの誘惑
「…まだいたのか?」

はっと顔を上げると、隣の営業設計の小椋課長。
30歳を過ぎてもまだまだ設計の前線で働く俺の目標。
会社の顔とも言われる相模さんとは同期でよく比べられているけれど、コンクールや昇進には全く興味がなく淡々と確実にお客様の希望を設計していく姿は職人のようで。

相模さんのような華やかな光は浴びなくても、自分の中の自信が仕事に出ている。

細面のクールな顔で厳しく部下を育てる姿も俺には憧れ。

隣の部署にいる俺にも声をかけてくれて、それだけで嬉しくなる。

「金曜の夜に残業って寂しい男だったか?」

くくっと笑いながら俺の隣に立つと、印刷を終えた図面を見る目は真剣。

「…展示場だな?
営業部が総力上げるって気合い入れてたぞ。

デートスポットになるように仕掛けるって…かなりの予算も組んでたな」
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