プラチナの誘惑
父が経営している、かなり知られた会社の名前と、女受けするらしい俺の顔につられて近づく女は今までにも多くいた。

気持ちの入り込まない恋愛らしき付き合いもかなりした。

俺自身を見抜かないままに軽く付き合っても、建築にしか興味がなく父の会社も兄貴が継ぐという現実が、俺から離れるステップとなる。

たとえ見た目が好みでも、それだけじゃ女を繋ぎとめる事もできない。
繋ぎとめたいと思う女にも会わなかった…。

「その受付にいた子って、結構な玉の輿にのったって聞いたぞ」

からかうような小椋さんの声に、苦笑しながら

「…どっかのホテルのオーナーの息子と結婚するって言ってましたよ。
希望通り玉の輿で幸せそうに笑ってました」

そう…。俺が初めて見る本心から幸せそうな綺麗な笑顔で自慢気に挨拶して退職していった…。

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