涼×蘭
「……」

図書室に響く音は大翔が本を捲る音だけ。
あとは何も聞こえない。

廊下で騒ぐ声は聞こえるけど……。

「……何の……本ですか?」

「……土佐日記」

渋いもん読んでるなー……。

「……面白いですか?」

「まぁまぁ……」

ちょっと面白いんだ。

「涼?」

「……はい?」

「ここなら外から見えない……話しても大丈夫」

「……気付いていたんですか?」

外を気にして話せなかった。
だって外には叔父さんの……。

「……わりと」

大翔はまた本を読みだす。

「……そうですか」

「肩」

「はい?」

肩?

「貸してやっても良いけど」

「……え?」

「……別に」

「いえ、借ります」

嗚呼……気付いてた。
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