涼×蘭
女物の着物を着る。最初のころはかなり抵抗してた。だって俺は男で女じゃない。

でもそれはもう昔の話。

抵抗するのにも疲れた……。

長襦袢を着て、着物を着て、ウィッグを付ける。

あとの仕上げは。

「涼?」

「鷹……」

学校から呼び戻されたのだろう鷹が腕を組んで壁に寄り掛かっている。
まだ授業があっただろうに……。

「その格好久しぶりだな」

「……」

「お化粧しなきゃなりませんね」

鷹は柄にもなく弱々しく笑いながら化粧箱に手を掛けた。
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