涼×蘭
「たまには手料理の一つでも作ってあげてください。いくらお忙しい旦那様でも塩おむすびの一つくらいは作れるでしょう?」

はぁ……と呆れた感じで溜息を吐きつつ、鷹が俺の隣に座る。ここはこんなに狭かったか……?

「……食べるかな」

「最近は食べる量が増えてきました」

「朝ご飯も?」

今まで朝ご飯を二、三口食べて学校に行く姿しか見たことが無い……一年も前の事なのだが。

「以前よりはちゃんと食べるようになりました」

「良かった……」

「それに奥様の作った料理も完食するようになっていますよ」

「……本当に?」

「旦那様と奥様に対して涼のことで嘘を吐きません」

「……そうだったな」

鷹を信頼している。
だからこそ涼のそばに鷹を置いているのだ。

「俺たちに嘘は吐かない」
この言葉はひっくり返せば俺達以外には平気で嘘を吐く。そういうことだ。なかなか肝が据わってる。

「さぁ、もう部屋に戻られたらいかがです? 奥様がいらっしゃいますよ」

「マジ?!」

「嘘は吐きません」

本当に久しぶりだ。
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