涼×蘭
「お待たせいたしました」

「あ、お帰りなさーい」

「さ、早くこっちに着替えましょうね」

「え」

浴衣を見た瞬間うわーいとやっていた蘭の動きが全て止まった。

「その……男の人用ですよ、ね……?」

「もちろん。男の人用ですよ」

紛れもない笑顔で答える。

蘭はなんだか疑いの眼で俺を見ているがそれは背の低い蘭が悪い。

急いで浴衣を着せ帯を絞める。

「……これ女用ですよね!?」

この浴衣の着せ方が男用じゃないと気付いたのか抗議を持ちかけようとする蘭。
ほう……なかなか賢くなりましたね。

しかしそんなこと今の俺には関係ない。

「そんなに胸が欲しいんならタオルを詰めなさい。ほら、こっち向いて!」

「そんなこと言ってません! やっぱり男の人用じゃないんですね!?」

「そんな細かいこと気にしない!」

顔をクイッと上げさせ、素早くだけど丁寧に紅をひき、睫毛を上げる。

これはもう手慣れたもんだ。

「に゙ぎゃーっ!?」

鷹と蘭のいる部屋には蘭の奇声が虚しく響き渡った……。
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