涼×蘭
「あ、お嬢ちゃん! 魚はいらんかね!?」

「?」

「湿気で髪がうねる」という言葉を知らない輝の髪の毛が、輝の振り返る体の動きに合わせて揺れる。
これこそ本物の見返り美人。

「今日は新鮮なのが入ったんだよ!」

と魚を片手に威勢よく輝に声を掛けてくるのは魚屋のおっさん。

「俺……?」

「お嬢ちゃんだよ!」

君以外に居ないだろう! と言いたげなのに申し訳ないが……。

「俺、男……」

「え? あ、ごめんよ!!
髪が長いから女の子かと思っちゃった!」

しかも振り返った瞬間も完全なる女性のようだった……。

「大丈夫です……」

「いやぁ……すまんね!」

「いえいえ……」
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