涼×蘭
また傘を差し、歩き続ける。
周りに通行人が居ないので、I字型になっている傘の持ち手をくるくると回し、周りに水滴を飛ばす。
小さい頃、これを何回もやっては親に怒られた。

ふと、向こうを見てみると、何やら白い紙を持ったまま、キョロキョロしながら来る、でかいけど細いのが居る。

なんだか涼に似ているな……。

でかいけど細いのは涼だけだ……。

俺の知り合いではね?

「あれ? 輝?」

「おう。涼ん家、こっち方面じゃないよな? 何しに来たの?」

たしか全く逆方向だった気が……。

「おつかい」

そう言って涼が俺に向かって紙をひらひらと見せる。

「おつかい? 涼が? 鷹にじゃなくて?」

「あぁ。俺が母様に頼まれた。お茶菓子買ってきて。って」

「こんなとこまで……?」

「うん」

「大変なこった」

「……そんなことより輝、『中能登屋(ナカノトヤ)』って知らね……?」

「中能登屋……?」

「知らねぇよなぁ……」

はぁ……とため息を吐き残念そうにする涼。

あ、もしかしてこいつ。

「迷ったの?」
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