僕の明日みんなの明日
お母さんは僕に本当の気持ちを教えてくれた。お母さんの痛みも、お父さんの優しさもわかる気がする。

『おばさん、おばさんは浩太のことが嫌いだったのかよ?』

歩君はお母さんに強い口調で聞いた。

『そんなことない!愛していたわ。ううん、今でも愛してる。けれどあの子のことを思うと何だか苦しくて。あの子が時々拓也さんに見える時があったの。しぐさとか話し方とかがとても似ていた。それでも…それでも浩太は拓也さんの子じゃない。それが辛くて…。』

お母さんの瞳から再び涙がこぼれ落ち、お母さんはそれを隠すように手で顔を覆った。まるで何かから逃げるように。そんなお母さんに歩君は噛みつくように言葉を放つ。

『浩太を言い訳にするのは止めろよ!おばさんは、結局何がしたいんだよ?辛いからって浩太を忘れたいのか?』

『そんなっ!!忘れることなんてできない!!』

『だったら、浩太に話すべきじゃないか。おじさんと三人で話し合うべきだったんだよ。』

『そうだったのかもしれない、けれど今更どうしようもないわ。浩太は死んで、拓也さんも眠ったままだもの。』

『そんな!』

『もうやめて、もういいよ歩君。』

僕は歩君の声を遮った。

『これ以上お母さんを責めないであげて。お母さんは悪くない、お母さんは僕を思ってくれたんだよ。不器用だったかもしれないけれど、それがお母さんの優しさだったんだ。ねぇ、これだけお母さんに伝えてくれるかな?』

僕は歩君に伝えて欲しいことを話した。話している間、お母さんは不思議そうに歩君を見つめていた。

『ごめん、言い過ぎたよ。色々と話してくれてありがとう。最後に浩太が言っていた言葉を伝えておくよ。「お母さん、僕もお母さんが大好きだよ、ありがとう。お父さんと仲直りしてね?」だってさ。じゃあ、俺は帰るよ。』

歩君はお母さんに僕が言った通りの事を伝えてその場から立ち上がり、お母さんのマンションから出て行った。帰るときにお母さんの目から一滴の涙が落ちるのが見えた。

外はもう夕暮れで、帰るときに見上げた空は今までに見たことないぐらい綺麗な夕焼けだった。
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