僕の明日みんなの明日
駅までの帰り道、僕たちは黙って歩き続けた。二人とも静かだけど、不思議と嫌な空気ではない。電車に乗っている間も黙っていた。これは電車の中では話し掛けないで欲しいと歩君との約束だったから。

電車を降りると、歩君が公園で休んでいこうと言ったので公園のベンチに並んで座った。公園には人影はなく、静かで落ち着いた空気が流れていた。

『歩君、今日はありがとう。僕のために色々してくれて。』

『別にお礼なんて…てゆうかごめんな?今回の事は他人の俺が口だしするべきじゃなかったのに。』

『ううん、そんなことないよ。僕、嬉しかった。だって歩君は僕のために怒ってくれたじゃないか。それに歩君がいなかったらずっと自分のこと知らないままだった。』

『…浩太はショックじゃないのか?自分が父親と血が繋がってないってこと。』

『そんなことない…って言ったら嘘になるよ。でもスゴくスッキリした気持ちなんだ。昔から僕は家族の誰にも似てないなって思ってたから、これで納得できた。今はお母さんが悲しい目で僕を見ていた理由も分かるよ。』

『普通そんなこと解ったらかなり落ち込むだろ。』

『確かにお父さんと血が繋がってないのは驚いたけど、悲しむことなんてないよ。お父さんは僕のこと大事にしてくれたし、一年間も一人で育ててくれた。それだけで十分幸せだったよ。お母さんもあんな辛い思いをしながらも僕を愛してくれた。何より僕はお父さんとお母さんが大好きなんだ。』

『お前、偉いな。』

僕らは互いに笑い合った。誰が何と言おうとも僕は幸せだった、それだけは分かっている。僕には血筋なんかよりもずっと強い繋がりがあることを僕は知っている。

僕は何度でも言えるよ「幸せな人生だった」って。
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