僕の明日みんなの明日
桜さんはとてもいい人だ。僕が死んだことになれてなくて、時々虚しく感じてしまう僕を励ましてくれる。桜さんは「死んでしまったけど、それを悔やんでもしかたない」そんな考え方をしている人だった。僕もそう思っていたけど、同じ状況の人に言われると心が軽くなるような気がした。桜さんと話すのはとても楽しい、2人で笑いながら話していると桜が急にもじもじしながら話題を変えた。

『さっき話してた友達ってさ、生きてるよね?』

桜さんはなぜか少し言いにくそうに聞いてきた。

『そうだよ、柴原歩君って言って幽霊が見えるんだ。』

『やっぱり!?な〜んか幽霊とは違う感じがしたんだよね。けど、あんたは幽霊でしょ。なのにあんたと話が出来てるから不思議だったんだよね。初めて見たわ、幽霊見えるヤツ。』

『そうなんだ、どうして僕が幽霊だって見ただけで分かるの?』

『あんたも分かるでしょ?なんかこう、感覚で。』

そうか、桜さんを見たときに感じたあの不思議な感覚がそれだったんだ。

『あんたに頼みがあるんだけど、あの幽霊が見える歩って子をここに連れて来てくれない?お願い!』

『別にいいけど、どうして?』

『あたしっていわゆる地縛霊ってやつなの。だからこの公園から出られないのよ。だからお願い!歩に頼みたいことがあるの。』

『わかった。じゃあ明日歩君と一緒に来るね。』

桜さんはとても嬉しそうに僕の手を握ってきた。歩君を絶対に連れて来ると約束して公園を出た。

桜さんと別れた後、お父さんの病院に行くことにした。病院に着いたときにはもう病院は閉まっていていたから、壁から入った。なんだか泥棒みたいな入り方だったからちょっとだけ気が引けた。

廊下を歩いて行くとき、天井の蛍光灯のひとつが切れかかっていて点滅している。そのせいか、いつもより病院の廊下が不気味に感じる。

お父さんの病室まで速足で行き部屋の前までいくと、そこには誰かが立っていた。暗くてよく見えないけど、格好から看護婦さんのようだ。

『あれ?君は前に会った子だよね。』

話し掛けてきたのは、僕が死んだ日に会った幽霊が見える看護婦さんだった。
< 25 / 69 >

この作品をシェア

pagetop