僕の明日みんなの明日
朝になって僕は大事なことに気付いた。桜さんに歩君を連れてくると約束したのはいいけど、歩君の居場所がわからない。そう言えば僕って歩君の事は幽霊が見えるって事以外何も知らないじゃないか。どうしよう、このままじゃあ桜さんとの約束を守れない。

焦っていても仕方ない、とりあえず学校行ってみよう。もしかしたら学校の途中に歩君の家があるかもしれないし、学校にいる可能性もあるかも。そんな前向き思考で自分をごまかしながら学校の通学路を走った。柴原という名字を通り過ぎる一軒一軒を確認していたけど、似た名前さえも見つからずに学校に到着してしまった。

学校の中を覗くと今日は日曜日だから人の気配はない。一通りグランドを回って、体育館も覗いてみたけど歩君どころか人っ子一人いなかった。

今度は学校の中に入ってみた。廊下を歩いていると人の話声が聞こえてきた。どうやら職員室の方から聞こえてくるようだ。職員室の後ろの出入り口から覗いてみると、担任の川内先生と体育の坂口先生がいた。坂口先生はがっちりとした体格の見た目からでも体育先生っだと分かる男の先生だ。

近くまで近づいて2人の話を聞いていると、坂口先生が川内先生を食事に誘っているようだった。坂口先生が川内先生を狙っているというのは女の子達の間でもっぱらの噂になっているのを思い出した。坂口先生は川内先生の机に片手を置いてキザっぽく話しているのが少しムカつく。

『川内先生そろそろお昼ですし、食事にでも行きませんか?』

『そうですね、どこにしましょうか。』

『じゃあ、先生のクラスに転校してきた柴原歩の両親がやってるレストランに行きましょうよ。美味しいって噂ですよ。』

『たしか、駅前のグラッチェってお店でしたよね。』

川内先生の言葉を聞き逃さなかった。よし、歩君の家がわかったぞ。急いで行かなくちゃ。でも、歩君の家がレストランだったなんてちょっと意外かも。そういえば僕は歩君のことを何一つ聞いてなかった。いつも僕の話を聞いてもらってばかりだったからな。今度は僕が歩君のことを聞こう、歩君のことをもっと知りたい。僕はまた一つ歩君に会う理由を持って駅前に急いだ。
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