僕の明日みんなの明日

転校生の話は学校に着いて教室に入ってからも続き、川内先生が入ってきて朝のﾎｰﾑﾙｰﾑで中断された。

川内先生は僕のｸﾗｽの担任教師で大学を卒業したばかりの若い女の先生だ。先生は背が高く細身の綺麗で優くて人気者だ。もちろん僕も大好きだ。川内先生は出席簿を教卓の上でトントンと鳴らし、クラスの注目を集めた。そして軽く咳をした後、話し始めた。

『みなさんもﾆｭｰｽで知っていると思いますが、この近くで殺人事件がありました。犯人はまだ捕まっていないので大変危険です。なので下校のときは地域ごとに班を作り、一つの班に一人先生が一緒に帰ることになりました。みなさん解りましたか？帰りのﾎｰﾑﾙｰﾑでみんながどこの班かを教えます。それでは出席を取ります。』

殺人事件…やっぱり学校でもこの話で持ち切りだった。クラスのざわめきはなかなか治まることはなさそうだ。それにしてもなんか怖いな、身近で誰かの命が無くなるなんて…。

『怖いよね〜、殺人だって。でも犯人も遠くに逃げてるよね？だって近くにいたら捕まっちゃうもん。』

１人肩が縮こまった僕に隣の席の西高 明日美（ﾆｼﾀｶ ｱｽﾐ）ちゃんが話し掛けてきた。

『そうだよ、すぐに捕まるよ。』

『とか言って怖いでしょ？』

『そ、そんなことないよ。』

『本当？なんか怪しいぞ。』

『コラッ!!ザワザワしない！』

明日美ちゃんに必死にした言い訳は先生に怒られてすぐに中断されてしまった。助かった、あのまま話を続けたら恐がってるのがﾊﾞﾚたかもしれない。

今日は一日中殺人事件の話ばかり耳に入ってくる。それに授業もいくつか変更になって防犯対策の話になった。長い１日が終わって、帰る時間になり班ごとに分かれて下校し始めた。