僕の明日みんなの明日
各務さんの会社は遠くて、タクシーに乗って行くことになった。お金の心配を歩君に聞くとお小遣いでなんとかなると言ってタクシーを止めて素早く乗った。

『歩君、どうして会社に行くの？今日は日曜だから休みじゃないかな。』

『副社長ともなると忙しくて休みもないんだよ。それに桜が言ってたんだ、家にいなかったら会社にいるだろうって。』

その時桜さんと各務さんの絆の強さを感じた。やっぱり恋人同士なら相手の居場所は分かるんだな。また歩君に話し掛けようとしたら、運転手が歩君を怪しんでいたのでやめた。

タクシーに乗って、静かにしている間に会社に到着した。各務さんの会社はとても立派なビルだった。僕たちが会社の中に入ろうとしたらビルの入り口に立った警備員に止められてしまった。

歩君は色んな言い訳を言ってみたけど、聞き入れてはくれなかった。最後には体を持ち上げられて強制的に外に出された。しかし、歩君の騒ぎを見て一人の男性が止めに入った。

『どうしたんだ、何の騒ぎだ？』

警備員はその男性を前にすると背筋をピンと伸ばした。

『副社長!?すいません、この子供が中に入れろと騒いでいたもので。』

副社長ってことはこの人が桜さんの恋人の各務さん？長い黒髪でスラッと背の高いイギリス紳士のようでとても優しそうな人だ。
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