僕の明日みんなの明日
各務さんの優しい笑顔が消えて怒りが表れた。

『何故桜のことを知っているんだっ!?誰も彼女との関係を知らないはずだぞ!!』

僕は各務さんの気迫に圧倒されそうになったのに歩君は冷静に話を続けた。

『その話をするにはあんたに聞きたいことがあるんだ。どうして毎日公園に行くんだ?』

『そんなことまで知っているなんて…。君は何者だ?何が目的なんだ?』

『良いから答えてよ。答えてくれたら俺が知っていることを全部話す。』

各務さんは一瞬複雑そうな顔をしていたけど、歩君を睨みつけて話を始めた。

『あの公園は桜と初めて出会った場所なんだ。彼女はいつも公園を通って犬の散歩をしていてね、私がベンチで考え事をしていたら彼女が声を掛けくれたんだ。私が落ち込んでいるように見えたらしい。その時は色々と問題を抱え込んでいて疲れていたんだ。だけど彼女と話をしているうちに元気が湧いてきた気がした。それから彼女と話をしていくうちに彼女にどんどん惹かれていくのが分かった。けれど倍近く違う年の差に悩んで、思いを伝えることさえできなかった。すると彼女の方から交際を申し込んでくれたんだ。彼女に年の差なんて関係ない、大事なのは気持ちだと言われた。私はその言葉で迷いが吹っ切れ、彼女の申し出を受けた。それから三ヶ月後に彼女は死んでしまった。私と出掛けている時に。私の責任だ、私に出会わなければ彼女は死ぬことはなかった。この公園は彼女に初めて出会った場所だから、そこなら彼女に気持ちが届くかもしれないと思い謝りに行っているんだ。』

各務さんの桜さんに対する思いが、人を愛するという気持ちが僕にも少し分かったような気がした。
< 37 / 69 >

この作品をシェア

pagetop