僕の明日みんなの明日
僕は歩君に通訳を頼んで各務さんに思いをぶつけた。

『「各務さんはどうして桜さんが恨んでいると思うの?各務さんがそんなんだから桜さんはいつまでも成仏できないんだ。僕は死んで間もないけど幽霊の辛さは分かるつもりだよ。幽霊が一番辛いこと、それは大切な人が辛いのを見て何も出来ないことだ。僕も体験した。あんな辛い思いは初めてだったよ。各務さんはそんな辛い思いを桜さんが死んでからずっとさせていたんだよ!それがどんなに酷いことか分かる?大切な人が自分の為に哀しんでいる姿を見せ続けられる辛さが各務さんに分かる?」…もういい、落ち着け浩太。』

僕は無我夢中で喋り続けていて、歩君が止めてくれなかったらもっと喋り続けるところだった。

各務さんは僕の言葉を真剣に聞いてくれたみたいで、黙って考え込んでいる。

『浩太君…だったね?ありがとう。そしてすまない。相手の声が聞こえないことをいいことに自分の想いを相手に押し付けていただけだった。私は本当に自分勝手な人間だ。』

反省する各務さんを見て歩君は嬉しそうに声をかけた。

『じゃあ幽霊のこと信じてくれるのか?』

『ああ、信じるよ。』

各務さんは再び優しい笑顔を僕たちに向けてくれた。良かった、僕の気持ちは各務さんにちゃんと通じたみたいだ。
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