僕の明日みんなの明日
僕は急いで加藤さんを探した。なんとなく嫌な気配する方へと行ってみると、見つけた、アイツと加藤さんだ!二人はビルの角を曲がって人通りの少ない道に入った。

どんどん裏道に入っていく、すると古いアパートの中に入るのが見えた。急いで追いかけると、どうやらアイツの部屋らしい。部屋に入るのはマズイと思って、窓から様子を見ることにした。

あの時は本当に殺しちゃうと思ったけど、幽霊にできるのかな?そもそもどうやってやるの?

アイツは加藤さんに気付きもせずに、散らかった部屋で汚い布団に寝転んでテレビを見ている。加藤さんもジットそれを見ているだけだ、時々何か言ってるみたいだけどただの独り言だ。

しばらく見ていても何もせず、アイツは眠りだした。もう大丈夫かなと思ったその時、台所の包丁が浮いて飛んで来た!?どうやら加藤さんがやってるらしい。包丁はゆっくりと動いて、アイツの頭の上で止まった。大変だ、止めさせないと。
『加藤さん、ダメだ!!』

僕の声に驚いて包丁はアイツの顔を逸れて床に刺さった。

『殺しちゃダメだ。』

『ドウシテ?キミナラワカルデショ?』

『分かるよ、すごく。』

『ダッタラトメナイデ!』

『分かるから、そんなことして欲しくないんだ。そいつを殺しても死んだ人は生き返らない。』

『ソンナコトワカッテル!ダケド、コノママコイツヲユルスコトナンテデキナイ。コイツニモムスメノクルシミヲアジアワセテヤル。』

『そんなことしても嬉しくないよ!僕があなたの子供だったらそんなことして欲しくない・・・』

僕はそう言うと、声を出して泣き出した。とにかく哀しくて、辛くて声が枯れるくらい泣いた。泣き終わると、加藤さんの顔が穏やかになっていた。

『大丈夫?』

『・・・うん。』

加藤さんは、よしよしと僕の頭を撫でてくれた。その手はとても気持ち良くて、まるでお母さんの手みたいだった。
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