僕の明日みんなの明日
夕暮れの日射しの中に、うずくまって少し膨らんだ地面を見つめる松田の姿があって、その顔からは笑顔と哀しみの両方が感じ取れた。

石原を説得できなかったことを伝えるかどうかは、松田がいる神社に来ている今も迷ってる。石原を連れてくるどころか怒らせてしまった。状況は前より最悪。けれど、言うしかない。

『・・・松田。』

『やあ柴原君、また来てくれたんだ。』

『うん、まあ。あのさ、実は・・・』

『拓海。』

え!?拓海?松田の視線の先には確かに石原が立っている。

『なんであんたがここに?来る気なったんだ。』

『ここに来たのはお前の為でも貴斗の為でもない、自分の為だ。』

『でも俺の言うことを信じたから来たんだよな。』

『いや、俺は幽霊を信じないし、お前のことも信じない。』

『あっそ。けどな、松田はここにいるのは本当だからな。』

『少し黙っててくれ。』

石原は少し膨らんだ地面を掘り始めた。黙々と掘り続けて、やっと小さなビンを掘り出した。土で汚れたビンの中には二枚の紙が入っている、どうやら2人が十年前に埋めた手紙のようだ。
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