僕の明日みんなの明日
『おい!どうなってんだよ、一文字も書いてない手紙なんて聞いたことねぇぞ。』

『貴斗もここに来てないんだ、別にいいだろ。』

『何だと!?松田はちゃんとここにいる、十年もお前を待ち続けたんだ。』

『もういいよ、柴原君ありがとう。拓海の言うとおりだよ、僕は約束を破って死んじゃったから。』

『そんなの絶対おかしい!松田は生きようとしたんだ、なのに・・・。』

『うるっさいんだよ!・・・一人・・・で・・・喋るん・・・じゃねぇよ。』

石原はその場に泣き崩れた、松田の手紙を握りしめて泣きながら地面を殴りつけた。拳からは血がにじみ出てきてもそれでも止めずに殴り続けた。

『やめて!拓海やめてよ。柴原君、拓海を止めて。』

俺は石原の行動に驚いて呆然としてたが、松田の声で我に返った。

『おい、止めろ。何してんだよ!』

『俺は、俺は知ってたんだ!心臓が弱いことも、長く生きれないってことも。なのに、俺は何もしてやれなかった。貴斗と手紙を書こうとした時も、貴斗は死なないって自分に言い聞かせたけどダメだった。頭から貴斗が死ぬってことが離れなくてどうしても書くことができなかった。ごめん、ごめんな貴斗。』

そうだったのか、石原は松田が何も言わずに死んだことを怒っていると思ってたけど、石原は松田の死に苦しんでいたんだ。

『お願い柴原君、僕の気持ちを拓海に伝えて。』

『まかしとけよ。』

俺は桜にしたように、松田を俺の中に入れようとした。だけど、その必要はないみたいだ。

『た・・・か・・・と?貴斗なのか?』

『拓海、僕が見えるの?』

『ああ見える、見えるよ貴斗。』

やっと2人の心が繋がった、これで思う存分話ができるだろ。
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