僕の明日みんなの明日
『拓海、ゴメンね。ずっと辛い思いをさせて、僕がもっとしっかりしていたらこんなことにならなかったのに。』

『違う、違うんだ。俺はお前の病気を知っていたのに何もしてやれなかった、そんな自分が許せなくて、ここにも来る資格が無かったんだ。』

『僕が死んだことに拓海が責任を感じることはないんだよ。拓海の気持ちはずっと分かってた、だって親友だからね。』

『だけど俺はお前が死ぬってことしか考えてなかった、お前は必死で生きようとしているのに。だから手紙も書くことができなかったんだ。』

『いいんだよ、これが僕の運命だったんだ、それに拓海の優しさは凄く伝わってきてる。』

地面にふさぎ込んだ石原に松田はそっと近づいて顔をのぞき込んだ。

『ねぇ拓海、キャッチボールしよ、ほら立ってさ。』

松田は石原の前にグローブを差し出し、ボールを持って少し離れた所に走った。

『拓海〜、投げるよ。』

松田の投げたボールを石原は黙って受け取りグローブにハマったボールを見つめている。そして決心した顔で投げ返した。

『俺、お前のことムカついてたんだぞ。なんで病気のこと黙ってたんだよ!』

松田は怒りながら投げ返してきた石原に少し驚いていたけど、少し笑った後すぐに投げ返した。

『拓海こそ何でもっと早く来なかったんだよ、約束の日は3ヶ月前だよ!』

お互いの不満をボールと一緒に投げ合った。

『だから悪いって言ってるだろ、幽霊なんかいるなんて思わないだろ!』

『なんだよそれ?言い訳にならないよ、約束は約束だもんね。』

『俺だって辛かったんだからな、お前に言いたいことがあったのに。』

『何?』

『お前と親友になれてよかった。』

『これからもだよ、死んでもずっと親友だ。』

『そうだな。』

最後に石原が投げたボールは松田が受けることなく地面に転がった。どうやら松田は逝ったようだ。石原がボールを拾うとボールに「ありがとう」と書かれていた。

『それは俺の台詞だ。』

日は沈んで辺りはすっかり暗くなっていた。空にはたくさんの星が光り輝いていて、松田がサヨナラを言っているように見えた。
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