ラブリーホーム*先生の青③




コン、コン


一応 握らせたスプーンの柄を
ダイニングテーブルにぶつけ
青波は不満げな表情をした



「仕方ないだろ
オレはママと違うの」



イチは新聞やら
レジャーシートやら
敷き詰めて
青波に自由に食わせるけど


今日はオレだし
そんな汚れるのは勘弁


とりあえず
青波にスプーンは握らせたけど
納豆ご飯は青波の手が届かない
オレの前



「ほら、青波くん
あ~んして」



納豆ご飯をのせたスプーンを
青波に向けると
あ~んと大きな口が開いた



バグッと
食いついた青波くん


………ん?
青波くんのお口が
スプーンをくわえて
離さないぞ



「おいっ!青波
いくら何でもスプーンまで
食えねーって」



左右に揺らしながら
何とかスプーンを
青波の口から解放



……お前はスッポンか
どんだけ食い意地はってんだ



むぐむぐ
口を動かす青波を見て
カップ麺のふたをはがす



湯気と共に
スープのいい匂いがする



ああ、こないだ
コンビニで買った
398円もした塩ラーメン



カップ麺に398円
美味しくない訳がない



「いっただきまーす」
と箸で麺を掴んだとたん



ジト――――――――



まとわりつく
粘っこい視線を感じる



コンコンコンコンコンコン



どんだけの連打だっつうくらい
スプーンでテーブルを叩く音



顔を上げると
もう空になった口から
ヨダレをたらした青波が
カップ麺を凝視してた




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