ラブリーホーム*先生の青③
翌朝、朝食をとりながら
先生は郁弥くんに言った
「郁弥。
今日、オレ早く帰るから
一緒にお母さんの
見舞いに行こう」
先生の隣に座っていた
郁弥くんは
お味噌汁が入ったお椀を
持ったままピタッと止まり
固まった
キッチンで
先生のお弁当を包みながら
その様子を見てた私は
明らかに
郁弥くんの目の色が
変わったのがわかった
………郁弥くん?
「郁弥?どうした?」
心配そうに先生が
郁弥くんの顔をのぞくと
ハッとして
「い、いいです」
郁弥くんはお椀に口を付け
お味噌汁をすすった
「いいですってことは
ないだろう
明日、手術だったよな?
顔、見せて
元気づけてやんないと」
「大丈夫………。
ボク一人でバスに乗って
行けるから」
「でも」
「大丈夫ったら大丈夫っ!」
郁弥くんは大きな声を出し
乱暴にお椀をテーブルに置いた
珍しく
っていうか初めて
そんな声を聞いた
シン……と静まり返った中
ギュッと眉を寄せて
うつむいた郁弥くんの顔は
泣き顔に見えて
大丈夫?
そう口を開きかけた時
「ごめんなさい」
顔を上げた
郁弥くんは笑顔だった
「でも、きっと、お母さん
泉さんが一緒より
ボク一人の方が
気楽だからさ………」
妙に大人びた口調
だけど、
彼の下唇がわずかに震えてた