ラブリーホーム*先生の青③





「開けたよ」



ドアの向こうの先生に
そう言って
フライパンを構える



バチコ――――――ンと
ぶったたいてやる



「ああ、サンキュ」


先生の声と共に
カチャ………
ドアがゆっくり開いて




「覚悟しやがれ
この浮気男―――――っっ」



先生は玄関に
ビクゥッと
立ち尽くし
「でえっ」と
変な驚きの声を上げた




「どりゃぁぁ―――――っ」




フライパンを振り上げ
渾身の一発を食らわせようと
先生に襲いかかるけど




  パシッ




手首を掴まれ
押さえつけられる




「離せっ!くそ親父っ!」



「な、なんだよ
何があったんだよ
なんなんだよフライパン」



ぐぐぐぐぐぐ………
互いに力を込めて
腕が震える



「一発いや百発殴らせろー」


「バカお前
亭主を殺す気かっ……」


「そうしないと
気が収まらないよ
この浮気男っ!
エロ親父っ!」



「ちょっと待て
オレが……いつ……
浮気したっていうんだよっ!」


グイッ


「……きゃあっ!」


ガタガタッ………
ガシャン




玄関の冷たい床に
押し倒されて
弾みでフライパンが
手から離れた




そのまま先生は
私の上に馬乗りになって
手首を押さえつける



「なんなんだよ
言えよ、イチ」



鼻の頭がぶつかるほど
先生は顔を私に近付けた
お酒くさい吐息が
もろに かかる



その中で
甘い甘い香水の移り香が
私の鼻をかすめた





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