ラブリーホーム*先生の青③




難しい表情を浮かべた先生は
郁弥くんが どうして
そうなったのか分からなくて
かける言葉を頭の中
必死で探してるみたいだった




何事もなかったみたいに
また、ご飯を口に運び始める
郁弥くんに対し



先生と私だけ
さっきの雰囲気に
取り残されてる



まだ寝室で眠っていた青波の
「んぎ――――――」って
泣き声が聞こえて



心配だったけど
寝室へ向かった



ダイニングを通りすぎる時
一度だけ
力のない寂しげな視線を
郁弥くんは
リビングのドアに向けた



その先には
私を呼んで泣きわめく
青波のいる寝室がある








私も先生も
何か大きな見誤りをしてる



そう感じた
一番 最初の朝だった



その日、
学校から帰ってきた郁弥くんは
ランドセルを置いてすぐ
一人でお母さんの
お見舞いに行くと



パパを待って
一緒に行こうと言う
私の言葉を頑なに拒み


出かけてしまった




なんとなく
帰って来なかったら
どうしよう



このまま、フラッと郁弥くんが
いなくなるんじゃないか



そんな不安がよぎったけど



郁弥くんは ちゃんと
家に帰ってきて
青波と遊んでくれたりした



ただ、先生が郁弥くんに
お母さんの様子を聞いても
笑顔で曖昧に
うなずくだけだった




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