ラブリーホーム*先生の青③
………悔しい
………悔しい
こんな風に男に
力ずくで押さえ込まれるのが
―――――――1番屈辱的だ
「離せっ!バーカ!」
ゴッ……
頭を上げて
思い切り頭突きしたけど
………いったーい
先生の石頭ー
「……いってー
イチの石頭ーっ!」
おんなじこと言って
先生はオデコを押さえ
ゴロッと転がるよーに
横にずれた
身体が自由になったけど
オデコが痛くて動けない
目もうるうる潤む
電気もついてない玄関で
二人並んで横になる
なんて滑稽な図だろうと
天井を見上げた
……玄関の天井なんて
なかなか見慣れない物だな
涙ににじむ視界で
妙に冷静にそう思った
「………なんでオレが
浮気男なの?」
低い声が静かに響く
「だってメール来てた」
「……メール?」
「あの夜………
先生が青波見てくれた夜
エリナって人から
メール来てた………」
「ハッ」と少し笑って
「そうか」と先生は呟いた
しばらく間があいて
「イチ、エリナちゃんは」
「やっぱり言わないで」
先生が口を開くと
急に怖くなる
絶対に負けたくないのに
悪いのは先生なのに
なんで私の方が弱いの?
だけど、悔しいけど
だけど
「言わないで……
聞きたくないよ……」
弱気で情けない女の声が
冷たい玄関に響いた