ラブリーホーム*先生の青③




青波を背中に背負い、通された
小学校の会議室



折り畳みの細長い机と
パイプ椅子が並ぶ
その部屋で


中年の男性教諭と
うなだれた郁弥くんがいる



私に気がついた男性教諭が
「あ、お忙しいところ…」
と言いかけたけど
それどころじゃない



「郁弥くんっ!」


うなだれる
郁弥くんの両肩を掴み
顔をのぞく



「ケンカしたって……
ケガは………」


郁弥くんのこめかみに
ガーゼが張ってある


「大丈夫?ケガしてる」


「あの、少し切ったみたいで
本当に申し訳ないです」


郁弥くんがケンカした
という連絡を受けて
私はすっかり気が動転してた


落ち着けと言わんばかりに
先生が椅子に座るように
私にすすめる


背中の青波をひざに抱き
椅子に座ると
先生が説明を始めた



クラスの男子数人と
ケンカして揉み合いになった時
壁にぶつかって
郁弥くんがケガをしたそうだ



信じられないことに
先に飛びかかって行ったのが
郁弥くんだと先生は言った



「相手のお子さんには
ケガはないんでね」


「……はあ」と うなずきながら
何とも歯切れの悪い
教諭の話し方が嫌だった



郁弥くんは隣で
変わらず うつむいてる




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