ラブリーホーム*先生の青③
「あの」
私が口を開くと
先生の眉がピクリと動いた
「郁弥は理由もなく
ケンカする子じゃないです。
何があったんですか?」
先生は少し言いにくそうに
「からかい……が
あったみたいです」
「からかい」
「川口くんの家庭のことで少し」
「家庭のこと………」
視線を隣へ移すと
郁弥くんのひざの上
固く握りしめた手が震えてた
「まあ、川口くん
おとなしいから
いつもは
こんな事ないんですけどね」
先生は事務の女性が出した
お茶をすすりながら
「ただ、今、川口くん
家庭でいろいろあるんでしょ
お母さん入院中だし
お父さんいないしね」
………なにを言ってるんだ
このオジサン
「やっぱり、
仕方ないですよね
お家が大変だと
そういうこともありますよ
寂しいんでしょうかね
やっぱり」
「なに言ってるんですか?」
気がついたら口を開いてた
「なに言ってるんですか、先生
お母さんが入院中とか
お父さんいないとか
全然、
関係ないじゃないですか」
先生はきょとんと
私を見てる
「関係ないですよ
家の事をからかわれたら
両親が揃っていようが
いなかろうが
関係なく怒りますよ」
心臓がバクバクしてる
ムカついて肩が震える
家庭の事をからかわれたと
言った先生自身が今
郁弥くんをバカにしてる