ラブリーホーム*先生の青③




帰り道、小学生はもういなくて
太陽はだいぶ
西の方に沈んで行ってた



少し前を行く
郁弥くんの小さな背中


右手には草が生い茂る
河川敷があって
お年寄りが
小型犬を散歩させてた



小学校の会議室で
先生の言葉に
無性にムカついた理由があった



「あのさ
私、愛人の子供なんだよね」


目の前の黒いランドセルに
思い出したことを
独り言みたいに話した



「小学5年のクラス替えで
同じクラスになった子がいて」


小さくて太ってる女の子だった
舌っ足らずな話し方が
特徴的だった


「その子、親が離婚して
母親と暮らしてるから
私たち仲間だねって
私に言ったの」



 いっちゃんと私は同じ仲間



あの子はそう笑い
何をするにも
私にくっついてきた
だけど


「だけどね、あの子

『いっちゃん、自分のお父さん知らないの?私のお父さんは今も会いに来るよ。いっちゃんは可哀想だね』

笑いながら、そう言うんだ
毎日だよ、毎日
たまんなくてさぁ……」



ある日あんまりムカついて
『うるさいミニブタ
ついて来んな』って
言ってやったら



次の日から
あの子は学校に来なくなった




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