ラブリーホーム*先生の青③



見送りは玄関までにした


ランドセルに
小さなボストンバック
靴を履いた郁弥くんは


「お世話になりました」


頭をペコリと下げた


たった14日間
だけど、郁弥くんは
もう家の子だ


お母さんの元へ帰れるのは
嬉しい事なのに
寂しくてどーにもならない


胸がぐちゃぐちゃで
言葉が出てこない


私の腕の中
青波はじっと
郁弥くんを見つめてる


「い、いつでも遊びに来てね」


「はい」


ああ~
泣いたらダメだよ
泣いたらダメだよ、私


そんな私を
郁弥くんの後ろで
先生が困ったように
笑って見てる


「じゃ」と郁弥くんが
ドアに向かい一歩下がったから



「せっ、青波
お兄ちゃんにバイバイ
またねーって」


ポンポン
お尻をたたくと


「ばーばい?」


「そうだよ」


「いーちゃあ……」


郁弥くんが笑って
青波に手を振ったとたんに



「い――――――ぢゃあぁぁぁ」



キ―――――――――ンと
鼓膜に
突き刺さるような声を上げ


「うぇ――――――――」



やっと
バイバイを理解した
青波が号泣した


「青波くん………」


ドサッと足元に荷物を下ろして
郁弥くんは青波を抱っこした


「いってきまーす、だよ
青波くん、いってきまーす」


また帰ってくるからね


郁弥くんの言葉に
とうとう堪えきれず
青波と一緒に私も泣いた




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