ラブリーホーム*先生の青③




マンションの駐車場に車を停め
シートを少し倒して
ぼんやり前を見つめた



……今 帰ったら
イチがマシンガンのごとく
訊いてくるだろうな


いや、結局、
引き受けてしまったから
ちゃんと『あの事』を
イチに頭下げてお願いしなきゃならないけど



……今はダメだ
オレが冷静じゃない


ケータイを出して
アドレスから名前を出し
発信する



5回のコールのあと
「……はい」って出た



「カナ?今日お前んとこ
旦那いるの?」


「ううん。今日も出張
こんなに出張多いんじゃ
単身赴任よね」


クスクス笑うカナに
ホッとして


「んじゃ、どっかで飲もうよ」


「え~?今から?」


「なんだよ、嫌か?」


「市花ちゃん大丈夫?
泉はもう
子持ちのパパなんだから……」


「あ~、もう
説教は聞きたくねー
兄貴からさんざん
言われた後なんだよ」


「栄さんと何かあったの?」


「あった、あった
だから少し付き合えって」


カナはため息まじりに
仕方ないなぁと呟き
外はお金かかるし家においで
と言ってくれた



電話を切り
イチに遅くなるからと
メールして車を降り、
通りでタクシーをつかまえ
カナの家に向かった



カナは幼なじみだけあって
家のことを解ってる


愚痴るのには最適の相手だった




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