ラブリーホーム*先生の青③




「夕べは迷惑かけて
本当にごめんなさい」


頭を下げた先生を横目で見て


「そば」


「え?」


「そば伸びる。
食べながら話して」


わざわざ起きてきて
せっかく作ったそば
伸びたら哀しい


「あ、はい。いただきます」


箸を取る様子から
少しオドオドしてる
私が怒ってるって分かってる


……カナさんと飲んだ事に
ちゃんと罪悪感を
抱いてくれてんのかな


そばをすすりながら
先生は少し緊張した面持ちで


「断るつもりだったから
イチには言いたく
なかったんだけど」


「お義父さんの隠し子?」


先生は苦い表情でうなずいて


「恥ずかしい話だよ。
親父の女グセは病気っていうか
兄貴もオレも
その子の存在は知らなかったし

預かりたい子は
郁弥(イクミ)小学5年で
オレの弟だ」



……小学5年……


「でも、どうして急に?」


「うん。郁弥の母親が
病気で手術するそうなんだ」


「手術って……」


「いや、婦人科系の病気で
命に関わるとか
そういうんじゃないんだけど

入院中、郁弥を
預かる人がいなくて
そんな時に親父まで
身体壊して入院だろ?」



ま、アイツの入院は天罰だけど
そう呟き先生はそばをすすった




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