先生のビー玉
しばらく競技会に持って行っていた書類を二人で片付けていると、

「ごめんっ待たせちゃった!」

貴子が走ってやってきた。
どうやら、後輩に稽古をつける約束を矢部と約束していたらしい。

「大丈夫だったの?」

「大丈夫。その後輩、下宿生だし、6時過ぎるって言ってたから」

と内輪であおぎながら貴子は言う。
そして…

「じゃ、帰るか。
お前ら送ってやる」

と言い出したのだ。

「えっ、いいの?」

「ラッキー」

前者が佳奈で後者が貴子。

「お前らの反応…性格がモロ出だよ」

笑いながら席を立つ彼。
結局、それぞれの家まで送ってもらうことになった。

「あ、先に私、絶対に私」

と言い張る貴子。
うるさいといわれながらも自宅まで送り、今度は佳奈。
道順を教えていると…

「ほら、あれ、俺のマンション」

7階建てのマンションを指さす彼。

「え?えっ?うち…その先の一軒家です…」

「ほぉ…意外と知らないもんだなぁ…
家庭訪問なんてしないからな、最近は」

「そうですね。
1年の時は違うところに住んでましたから」

と佳奈。

「どおりで知らないはずだ」

納得する彼だった。
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