先生のビー玉
職員室に入ると、池田はまだ来ていないようだ。

「戸田、戸田」

と彼が手招きする。
ビー玉の事を思い出し、彼に駆け寄る佳奈。
すると…

「念入りに拝んどいたからばっちしだぞ」

ニヤリと笑って手渡す。

「もう、緊張して口から心臓が出そうです」

佳奈が言うと、笑いながら、

「安心しろ。
面接を受けるのはお前ひとりだし、無理な生徒だったら初めっから受けさせないって」

と励ます。
大きく頷く佳奈。

「お、戸田悪かった。
じゃ、行こうか」

と戻ってきた池田が佳奈に声をかける。

「しっかりやれよっ」

と手を振る彼。
彼の周りにいる教師も一緒に手を振っている。
それに答えながら後に続く。

「緊張します…先生」

池田に言うと、

「大丈夫だよ。いつもの通りで大丈夫だから」

と言ってはくれるものの…
緊張するものは緊張するものである。
その緊張をほぐそうと、ポケットの中の巾着袋を握りしめる。

が…なにか違和感がある。

思わず取りだすと、形が四角い。
中を見てみると、何やら紙が入っていた。

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