先生のビー玉
「もう…帰ろう」

こんな顔を彼に見られたくもないし、誰とも話したくない。
ノソッと立ち上がって、置いていた鞄を取り、パソコン室を出た。
と同時に彼が隣のパソコン室からソフトなどを片付けて出てきた。

が…

誰もいない。

「あれ?もう帰ったのか?戸田?」

パソコン室を覗くが…誰もいない。

「あれ?鞄もない…あれ?」

おかしく思いつつ荷物を持って職員室へ戻る。
…が、彼女はいない。

「今日は戸田はいないんですね、めずらしい」

と他の教師が言う。

「はぁ…おかしいんですよね。
勝手に帰ることなんてめったにないんですけど…」

頭をかしげながら話していると…

「先生、戸田は怪我でもしたんですか?」

職員室に戻ってきた池田が彼に聞く。

「いや、なにもないと思いますが…」

「そうですか?
じゃぁ、またどっかでずっこけたかな?
足を痛めているようでしたよ。
表情もいつもと違ったですし、話しかけてもニコリともしませんでしたから」

そういいつつ、自分の席に座る池田。
おかしいと感じつつ考えていると、

「どもっってあれ?佳奈は?」

後輩の指導に行っていた貴子が職員室にやってきた。

「俺が聞きたいよ」

彼が言う。

< 138 / 442 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop