先生のビー玉
別に気があってそう言ったことではないのは確かだ。
でも、そうでもなかったのかもしれない。

「戸田、これ打て」

「先生の仕事じゃないんですか?」

「俺より、お前のほうが早い」

「なんか理不尽」

「いいから」

カタカタ…とキーボードを打つ彼女。
手の動きを見ていると、俺の目が回ってしまうんじゃないか?
と思うくらい早い。

「確か…資格持ってたな?」

「そうですよ。
1級狙ってるんですけど、なかなか」

「ほぉ…大したもんだ」

そう言うと、俺のほうを見てにこっと笑って、

「先生には負けないです」

と憎まれ口を叩いてた。
そんなある日の事…
俺の机にいつの間にか入っていたビー玉に気付いた彼女。

「それ、ください」

なんて言ってきた。
別に何も考えずに渡した…が、ただ渡すのも面白くないので呪文なんてかけてやったら…
巾着袋に大切に持っていたんだから驚いた。

うぬぼれではないが…

なんとなく彼女の気持ちに気付いたのはその頃だ。
と同時に…俺の気持ちの中には同じ頃、同じ気持ちが芽生えていたのかもしれない。





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