先生のビー玉
車に寄り掛かっているその姿は…
ドキドキするほど様になっている。
佳奈に気付いた彼は、煙草を携帯灰皿に入れると、

「こんなに夜遅くに一人で帰るつもりだったのか?」

と言われる。
表情は…暗くてあまり分からない。

「いつもそうですよ」

佳奈が答えると、

「それは、神田と一緒だからだろ?
何かあったらどうするつもりだ?」

と決して怒っている様子ではない言い方だ。
黙っていると、

「ほら、乗れ」

そう言われ、2回目の彼の助手席に乗った。
久しぶりの彼の車は、同じ時間に校舎を出たはずなのに…
とても温かい。

「腹減ったな」

佳奈を見て笑う。

「ですね。
あ、今度池田先生におごってもらいましょう!
今日のお礼で」

佳奈が言うと、

「それは名案」

「でしょっ」

佳奈は、彼のほうを向いた。
次の瞬間、佳奈は彼の表情を見て…フリーズした。

今までに見たこともない優しい表情だったからだ。

思わずうつむく佳奈。

「どうかしたか?」

「い、いいいえっ」

あわてている佳奈を尻目に車を走らせる。





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