先生のビー玉
貴子の進学の話や、授業の話、彼の愚痴など色々と話したり聞いたりしている二人。
まるで、かつて職員室でやっていたやりとりと全く同じである。
笑い疲れた佳奈、思わず大きなあくびをしてしまう。

「疲れたか?」

そんな佳奈に気付いたのか、ちょうど信号待ちで止まった彼は佳奈を見る。

「笑い疲れです」

佳奈が言うと、

「俺も愚痴を聞いてくれる奴がいないから疲れるわ」

彼が笑っている。

「そうですか?
先生だったらどの生徒も聞きますよ」

「そんなことないぞ」

「そんなことありますよ~」

笑って彼を見た佳奈、彼の真剣なまなざしに驚いた。

先生…私見てる…?

頭の中が真っ白になって、出てくる言葉も…ない。

駄目だっ、顔が…ひきつってる…


とその時、クラクションが鳴った。


びくりと反応する佳奈。

同じく彼もはっとわれに返った。

発車した車は息も出来ないほど静まり返っている。



なにか話さなきゃ…







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