先生のビー玉
一方…

一人パソコン準備室に座る田村。

昨日の放課後は、かつての佳奈とのやり取りを思い出されて晴れやかだった。
彼女のパソコンを前にした真剣な眼差し、話しているときの笑顔。
今、思い出しても…顔がほころぶ。

気がつけば彼女のことを思う自分が…



情けない。



教師の立場でこれほど生徒に恋してしまっていることに…だ。

一度は卒業するまでは…と思っていた自分だったが、彼女のあの一言でそれも維持できるかどうかも分からない。

それにあの動揺を見られてしまった自分。


「はぁ…情けない…」


思わずぼやいてしまう。


「何が情けないんですか?先生」

「えっ?あぁ、なんでもないですよ」

準備室に入ってきた池田に驚く彼。
そんな彼を見…

「先生、あまり考え込まない方が良いですよ」

と一言。
パッと池田を見る彼。

「戸田でしょ?」

その名前が池田の口から出た瞬間、フリーズしてしまった。

「先生、分かりやすいんです」

「あ…あはは・・・・・はぁ…参ったな…」

ただそう言うしかない彼だった。

池田の話では、佳奈の担任になってから薄々は気付いていたようだ。
まぁ、貴子や恭子と同じと言うわけだ。


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