先生のビー玉
それからどれくらい経っただろうか…
彼女も泣きやみ、黙りこんでいる。

「戸田?」

「…はい…」

「送るぞ。帰るか?」

「…はい…」

彼女を自分から離そうとするが…

「戸田?」

「ひどい顔…してます」

「あはは、してないよ」

「してますっ」

「じゃ、このまま帰るか?」

「それは…」

「じゃ、職員室行くけど…行くか?」

「いや、ちょっと図書室に行きます」

フッと笑い…

「こりゃぁ、休み明けが…大変だ」

そう言い、一緒に保健室をでようと入口に立つ。
鍵を開けない彼を見る彼女。

あまりにもあどけない彼女の表情に…思わず…

「我慢…できない」

「んっ…」

「俺とのファーストキス…保健室で申し訳ない」

ギュッと彼女を抱きしめる。
しばらく動かない彼女。

「出れないぞ」

「顔…真っ赤です」

「ばかっ、俺も真っ赤だよ」

二人、離れて笑う。

「先に行け。
しばらくしてから行くから。
職員室を出るときにメール…知らないな」

「赤外線送信します…」

「便利になったもんだ」

受信後、彼女は保健室を出て行った。

< 292 / 442 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop