先生のビー玉
「失礼します…」

佳奈が中に入ると、

「あら、どこか悪いの?」

と誰もいない保健室にただ一人孝枝が座っている。

「えっと…あの…」

佳奈の態度を察知したのか、

「あぁ、そういうことね。
じゃぁ…もうすぐご登場ってわけ」

机の上のものを整理し始める彼女。
と、保健室のドアが開く音が聞こえてきた。

「もうご登場?
先生、放課後まで耐えられないの?」

「は?ただちょっと彼女と話したいことがあって…」

「だから、後始末はちゃんとしておいてくださいよ」

とティッシュを指さす孝枝。
まだ理解できない佳奈。
が…彼は理解できたようだ。

「…先生、冗談もほどほどにしてくださいよ。
別に先生がいてくださってもかまいません」

大きなため息をつき言う彼。

「なに?そっちじゃないの?
つまんな~いっ
でも、私も用事があるから好きなように使っちゃってくださいな。
カギ、ちゃんと閉めてくださいよ」

そう言い、ヒールの音を響かせながら保健室を出て行った。

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