先生のビー玉
「私、ちゃんと言うから」

彼女の言った言葉だ。
朝からこの引っかかって仕方がない。
止めさせようと彼女を探してみるが…こういう時に限って見つからない。
移動教室の途中に見計らって廊下を歩いてみる…

が…

「あっ、先生っ」

安藤が声をかけてくる。
と同時に彼女がこっちを見ながら歩いていく。

俺が話したいのは彼女なのに…

仕方なく職員室に戻る。
そんなことを繰り返してあっという間に放課後。
パソコン室の窓からは、がらんとしたバス停。

ふとため息をつく俺。

とその時、

「先生っ」

声の主は…神田だった。

「おう、まだいたのか?勉強か?」

そう聞くと、

「そうなんだけど、どうも先生の態度がおかしいなぁって思ったからね」

目の前に座る神田。

思わず苦笑い。
すると、

「佳奈のことでしょ?
自動車学校での奴とのこと」

と言い出した。

「まぁな」

一言言うと、

「佳奈はね、先生に心配かけたくないってずっと言ってた。
内心はものすごく不安なんだよ。
でも、恭子も付いてるし、先生が佳奈のこと気にしてるの…ちゃんとわかってるから大丈夫だよ」

と言う。

「…そうか」

そう言うと、しばらく黙って座っていたが…

「じゃ、今晩でも電話かけてあげて欲しいな。
佳奈もそれを待ってると思う」

そう言い、準備室を出て行った。


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