雨のあとに
マサルドリアから小型船で遺跡のあるスウェダ国に向かった。ディーンと2人で人間の国に向かうのは少し不安だった。

『ねぇ、ディーン。あたしがレオンたちを置いて来ちゃったんだけど、2人だけで人間の国に行って大丈夫かな?』

『安心しろ。スウェダは魔族に対してそれほど敵意を向けてはいない。こちらから何もしなければ安全だ、むしろ少人数の方が騒ぎも起こらんだろう。』

ディーンの話を聞いて安心した。それからのあたしは旅行気分になってはしゃいでいた、だってデートみたいで舞い上がっちゃうもん。スウェダの港から東に向かって進んで行くと小さな村があった、とりあえず今日はそこで宿をとることになった。

『ディーン、遺跡まではどれくらいかかるの?』

『7日ほどあれば着くだろう。』

『そんなにかかるの!?結構遠いんだね。』

『うむ、明日は夜明けと同時に村を発つ。だから今夜はもう寝ろ。』

ディーンが灯りを消して、ベッドに潜り込んだけどなかなか寝付けなかった。

『まだ起きてる?』

『ああ。』

『あたしね、実は自分が普通じゃないって分かってたんだ。』

『どういうことだ?』

『あたしは小さい頃から何でもできて、苦手なものなんてなかった。少し勉強するだけでテストで満点とれたし、運動だってちょっと練習すれば何でもできた。だから自分は特別なんだって喜んだ時もあったけど、すぐに自分がみんなとは違うってことが怖くなったの。』

『そうか、私も貴様の剣術や魔術の上達には目を見張るものがあった。だが、それのどこが悪い?人より秀でていることは喜ばしいことではないか。』

『そう・・・なのかな?そうだよね、変なこと聞いてゴメンね。おやすみ。』

布団を頭まで被って顔を隠した。今のあたしはきっといい顔とは言えないから、きっとディーンに心配させてしまう。王様として何でもできるのは良いことだって思うけど、人としては・・・これ以上考えるのはヤメヤメ!明日も早いんだから寝よう。あたしは無理やり目をつぶって寝ようとしたらいつの間にか眠っていた。

翌朝まだ重い目を開けて遺跡に向かって再び進み始めた。青空の下を歩くのはとても気持ちいい、口数の少ないディーンも今日は割と話しをしてくれた。小さい頃の話や最近のことまで色々。
< 101 / 201 >

この作品をシェア

pagetop