雨のあとに
地球に帰ることで今のあたしはいなくなってしまうかもしれない。だったら知らないままディーンと一緒にマサルドリアに帰った方がいいのかも・・・なんて逃げてもあたしの運命は変わるわけないのにね。

マリアは懐からキラキラ光る粉の入ったビンを取り出して地面に置いた。それからビンに手をかざして呪文を唱えだした。

『アラ・ウ・カリジナス・セナトワ・バンクラエク。異界へと繋がる扉よ開きたまえ。』

呪文を唱え終えるとビンがカタカタと震え出して中の粉が噴き出した。粉はまるで小さな竜巻のように激しくビンの上で回転し始め、やがて一粒一粒が扉の形を描き始めて扉が姿を現した。

『ふぅ、さあ出来たわよ。この扉が地球に繋がっているわ。』

マリアがどうぞと扉の方に手を差し伸べたけど、足が前に進んでくれない。

『どうしたの?あんなにセイシロウに会いたがっていたじゃない。それとも会いたくなくなった?』

『そんなこと…ない。ちょっと考え事をしてただけよ。』

『誰かが一緒じゃないと行けないの?だったら寝ているお仲間を起こして一緒に行けば?』

『それはダメ!あたしは1人でも・・・。』

そうだあたしはいつでも誰かに守ってもらってた。地球ではお父さんが、コッチではディーン達が助けてくれた。あたし守ってもらってばかりだ。いつまで守ってもらうの?

あたしは守ってもらう為に女王になったんじゃない、守る為になったんだ。自分から逃げるのは止めよう、今度コッチに戻ってきたら本当のあたしを受けとめてもらおう。

自分で自分の心を支えながら扉を押して、光り輝く扉の向こう側へと進んだ。
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