雨のあとに
こんなことってあるの?自分はフツウの高校生だって思ってたのに、魔族の王様の生まれ変わりだって言われたことをやっと受け入れられたのにホントは魔族でもなかったんだ。

なんなの、コレって何かの冗談?それとも夢?夢ならどんなに良いだろう。あまりのショックで何も言えないあたしを心配したお父さんが手を差し伸べた。

『大丈夫かい?雨。』

あたしに触れようとしたお父さんの手を払いのけた。

『触らないで!!』

『・・・本当にすまない。』

『ヒドいよ、こんなのってないよ。あたしは何なの?人間でも魔族でもなかったら何なの?』

お父さんは何も答えず、黙ってあたしを見つめている。あたしもただ泣き続けて話すことはなくなった。しばらくしてお父さんはまたあたしに触ろうとしたからもう一度振り払うと今度は力一杯抱きしめられた。

『たとえ血が繋がってなくても、雨が何者であっても私は雨の父親だ!』

『そんなの・・・信じらんないよ。ずっとあたしのこと騙してたくせに。』

あたしが引き離そうとするとさらに強い力で抱きしめられた。

『確かに私は雨を騙していた。だけど、雨と暮らした日々に嘘はない。雨を愛しているという気持ちに偽りはない!』

その時、走馬灯のようにお父さんとの思い出が蘇ってくる。記憶の中のお父さんはいつも優しく暖かい存在だった。ああ、きっと分かってた。お父さんはあたしのことを大切に思ってくれてる、味方でいてくれるって。

『お・・・とう・・・さん・・・うわぁーん!!』

お父さんの胸にしがみついて大声で泣いた。あたしはお父さんのぬくもりを感じながら一瞬でも不安や恐怖を忘れることができた。
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