雨のあとに
『お父さんは鍵が２つあるって知らなかったの？』

『ああ、想像もしていなかった。だけど雨がいなければ意味がない。』

『どういうこと？あたしにも分かるように説明して。』

『マリアが作っていたホムンクルスは一体だけだった。だがある事故のショックで一体だったホムンクルスが二体になっていた。それが雨とレインだ。そしてマリアはどちらが王の魂を持っているか調べる為にマサルドリアから王の鍵を盗み、雨とレインに鍵を近づけてみると鍵は雨に反応した。それから私は鍵をマサルドリアに戻し、雨を連れて地球に逃げたんだ。そうすれば魔王の封印を解けないと思ったからね。』

『それってレインには王の鍵が使えなかったって事だよね？でもレインはもう一つの鍵を使えたよ。』

『何だって!?何がどうなっているんだ。鍵は雨にしか使えないと思っていたのに･･･。だからマリアは雨を追って来なかったのか？いや、雨の持っている鍵は雨にしか使えないはず。だったら･･･』

お父さんはぶつぶつと独り言のように喋りながら考え込んで自分の世界に入った。あたしとレインは同じだと思っていたけど、どうもそれぞれに役割みたいなものがあるみたいだ。しばらく考え込んでいたお父さんは何かひらめいたみたいで、急に騒ぎ出した。

『そうか、分かったぞ。もしかするともう一つの鍵が扉を開く為のものかもしれない。そうだとしたらヴァーンが危険だ！雨、一緒にヴァーンに戻ろう。』

あたしは頷いてお父さんと一緒に立ち上がった。そしてお父さんは自分の部屋に行って、戻って来た時にはあたしが地球に来る時にマリアが使ったのと同じ光る粉の入ったビンを持っていた。お父さんはビンの蓋を開けながら粉の説明をした。

『この粉は“星の架け橋”と言って、私とマリアが作った異次元に行く為の道具だ。もともとコレは魔王の封印された所に行く目的で作ったんだけど、地球とヴァーンとを行き来することしか出来なかった。さぁ行くよ、しっかり私に掴まって。』

お父さんはビンの蓋を開て呪文を唱えると粉が宙を舞ってあたしたちを包み込んだ。あたしは再びヴァーンへと向かった。
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