雨のあとに
町長さんの家にやって来て、あたし達は周りが騒ぐだけで一言も話すことなく盛り上がっていた。

あたしは椅子に座って紅茶をすすりながら町長さんの町自慢を延々と聞かされた。いい加減ウンザリしてきた、あたしはコソッとお父さんに耳打ちした。

『ねぇ、いつまでココに居なくちゃいけないのかな?』

『さあ?国王が町に訪れたんだから目一杯売り込みたいんだろうね。』

にこやかに答えるお父さん。もう!急いでマサルドリアに行くんじゃなかったの?あんなに急いで地球を出たのに〜。こんな所でいつまでも足止めされてちゃ意味ないじゃん。これならもう少し地球に残って沙耶とかに一言声をかけてくればよかった。それから30分ぐらい経った、すると町から騒ぎ声が聞こえた。

『ナニナニ!?何が起こったの?』

『雨、様子がおかしい。見に行ってみよう。』

お父さんに続いて町長の家を出た。騒ぎ声の方に行くと人だかりができていて、その中心に人が倒れている。倒れている人に見覚えがある、それにこの人が着ている鎧って・・・マサルドリアの兵士だ!

『どうしたの!?ヒドいケガ・・・直ぐに治してあげるからね。』

あたしは魔法で治そうと手を出した。すると兵士は血だらけの手を伸ばしてあたしの腕を掴みながら苦しそうに言った。

『へ・・・い・・・か、陛下。私のことに構わず直ぐにマサルドリアへお戻り下さい。レイン様が・・・レイン様が急に暴れ出し、城や街が破壊されてます。今はレオナルド閣下たちが応戦していますが長くは・・・ぐっ。』

『もう良いから、分かったからもう喋っちゃダメ。誰かこの人の手当てをお願い!』

どうしてレインが?もしかしてあの時のあたしみたいに・・・。傷ついた兵士を町長さんたちに任せて、あたしは町の人が用意してくれた馬に乗ってお父さんと一緒にマサルドリアへ急いだ。
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