雨のあとに
カーダはディーンに近づいて行ったけど、あたしは足が動かずに2人が話す姿を見ていた。すると2人の様子がおかしいことに気づいた。カーダはなんだか困惑したような顔をしてあたしに呼びかける。

『陛下、こちらへ来てください。なんだかディーンの様子がおかしいのです。』

『どうしたの?』

急いでディーン達に近づいた。カーダは困ったようにあたしを見て、ディーンは初めて会った時みたいにあたしを睨みつけた。

『ど、どうしたの?そんな怖い顔しないでよ。もしかして遺跡に置いて行ったこと怒っているの?あれは・・・』

『誰だコイツは?』

え?あまりにも予想外の言葉とディーンのあたしを見る目で体が痺れて動けなかった。そんなあたしを庇うようにカーダがディーンに怒鳴った。

『何を言っているのです!?我々の王、アメ陛下ではないですか!それに陛下はあなたの婚約者なのですよ。』

ディーンはあたしを見て冷たく言い放った。

『婚約だと?私とコイツが?何を馬鹿げた事を。私にそんな者はいない。それにマサルドリアの王はまだ見つかっていないだろう。』

何を言っているの?あたしよ、雨だよ。あなたの恋人の雨よ。そう言うこともできずにあたしはディーンを見つめるだけだった。
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